WRCで日本人として27年ぶりに表彰台に上がった勝田貴元選手取材会、最終戦では左前輪が外れて3輪状態に

最終戦ではアクシデント発生も、今後につながる大きな1戦に

取材会は終了したばかりのWRCシーズン最終戦の振り返りからスタート

取材会に参加した勝田選手は、まず終了したばかりのシーズン最終戦 ラリー・モンツァについて振り返り「今回の最終戦、モンツァはラリージャパンの代替戦ということで、イタリアで行なわれましたが、昨年の最終戦もモンツァで行なわれていて、2回目のラリー・モンツァ参戦になりました。ラリー自体はモンツァのサーキットを使ったステージと山岳地帯を使ったミックスのような感じで、距離的には同じような感じですが、初日と2日目の午前中が山岳地帯、2日目の午後と最終日がサーキットで開催されました。ただ、サーキットとは言っても未舗装路のグラベル区間も用意されていて、昨年は雨が降っていて泥だらけでしたが、今年は晴れて乾いた土で、そのミックスの路面で競技が行なわれました」。

WRCで日本人として27年ぶりに表彰台に上がった勝田貴元選手取材会、最終戦では左前輪が外れて3輪状態に

「自分の結果からお話しすると、総合7位で完走して、気持ちとしては非常に悔しいところもあります。今回の最終戦に向けて、そしてシーズン最終戦というだけでなく、来年からはマシンがハイブリッドカーの『Rally1』という車両に大きく変更されるので、WRカーの『ヤリスWRC』で最後のラリーにもなったので、僕自身も意気込みもあり、気合いを入れて挑みました。なかなか自分で思うようなペースを作れず、中には2番手、4番手といったわるくないステージタイムを残すこともできたのですが、もっと何かできたんじゃないかなというところも正直な感想としてあります」。

「初日は山岳地帯からのスタートで、ここではテストなしで挑んだということもあってペースを掴むことに少し時間をかけてしまいました。コンディションとしては、天候は晴れていたものの、前日に雨が降っていて路面が半乾きで、乾いているところも多かったのですが、まだ濡れたままのところも混ざっていて、やや難しいコンディションでした。スタートしてから少しずつペースを上げていき、フィーリングを掴んでいきました。初日を終えた時点では7番手でしたが、2日目からはペースを上げることができて、山岳地帯でも4番手タイムとか、区間によっては2番手のタイムも残せて、高いレベルで争っているトップの選手たちと遜色ないタイムで走れた区間もあって、いい流れでラリーを進めていけました」。

序盤の山岳地帯では区間によっては2番手のタイムも記録する好調な展開

「2日目の午後からはサーキットに戻って、タイム的には2番手~4番手といったところで、タイムだけ見ればわるい数字ではなかったのですが、自分の中では小さなミスがかなり多くあって『もっといいタイムを刻めたんじゃないか』という部分があったので、今後につなげていくためにしっかり反省しなければいけないと思っています」。

「最終日は6番手から5番手を狙ってヒュンダイの選手と争う状況で、なんとか5番手をキャッチしようとプッシュしていたのですが、ステージ15で約14秒差ぐらいのところで、残り2ステージでまだ何が起きるか分からないとできる限り攻めていこうと思っていたのですが、モンツァサーキットに昔からある有名なバンクのシケインで左フロントを軽く擦ってしまい、その瞬間には大きなトラブルにはならなかったのですが、その後に直線からフルブレーキで、荷重移動によってぶつけた左フロントの、アームかサスペンションがそこで壊れてしまい、コントロールを失ってスピンしながら次のシケインでもヒットする状況になりました」。

「そこからは左フロントタイヤが完全に脱落して3輪状態になって、なんとか3輪のままステージを走り切ったのですが、そこからメカニックがマシンに触れる15分のサービスタイムが設けられています。この15分という短い時間でチームのメカニックの皆さんがマシンを直してくれて、最終ステージを走ることができました。ダメージも非常に大きかったのでリタイヤになるかもしれないと覚悟していたのですが、チームの皆さんが、すばやく手際のいい素晴らしい作業のおかげで最終ステージを走れました」。

「そういった状況の最終ステージで、自分のミスでマシンにダメージを負ってしまい、いい流れでは最終ステージに臨めなかったので、自分の中ではペースを抑えてクルマを最後まで運ぶのか、プッシュして最後をいい形で終えるのか、どうすべきか葛藤があったのですが、ヤリ-マティ監督から『最後のステージだし、自分の持っている力を出し切って、自分を信じて頑張って行ってこい』と声を掛けられたので、そこでプッシュしていいタイムを刻むしかないと決断しました。クルマは15分という短い時間での応急手当だったので完全な状態ではありませんでしたが、チームに対しても信頼感を持てて、限界ギリギリで最後までプッシュしたことで、2番手のタイムで最終ステージを終えることができました。最終的には順位を1つ落として7番手にはなりましたが、自分にまだ足りない部分と、満足のいく部分などいろいろと見えた1戦になったので、今後につながる大きな1戦だったと思っています」と説明。シーズン最終戦でアクシデントに見舞われつつ、多くの収穫があったことを紹介した。

最終日のモンツァサーキットで接触によるダメージで左フロントタイヤが脱落するアクシデントも発生。しかし、チームメカニックの迅速な作業によってマシンは修復され、最後のステージも果敢にアタックすることが可能になった

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