子どもにとってパソコンは「電気仕掛けの紙と鉛筆」~専門家に聞く「いまデジタル教育に必要なこと」 :朝日新聞デジタル&Education

すべての小中学生にパソコンなどのデジタル端末を一人一台配る文部科学省の「GIGAスクール構想」。コロナ禍で必要性が一層高まったとして前倒しされ、2021年3月までに端末の配備が完了する見込みです。子どもたちがごく普通にパソコンに触れる時代、学びの現場はどのように変わり、家庭で気をつけるべき点は何でしょうか。この分野に詳しい東京学芸大学の高橋純・准教授にお話をうかがいました。

高橋純(たかはし・じゅん)

東京学芸大学准教授、独立行政法人教職員支援機構客員フェロー。専門は、教育工学、教育方法学。ICT活用によるわかりやすい授業づくりの研究に取り組み、文部科学省「教育の情報化に関する手引」作成検討会委員等を歴任。中央教育審議会臨時委員(初等中等教育分科会)、文部科学省「教育データの利活用に関する有識者会議」委員など。

自治体によって異なる「一人一台」

――小中学校でデジタル端末の配備は進んでいるのでしょうか。

「GIGAスクール構想」の達成目標は2023年度とされていましたが、コロナ禍で2020年度中と、3年も前倒しされました。そろそろ年度末ですので、ほとんどの区市町村では配備が進んでいると思います。校内LAN環境もほぼ同じスケジュールで整う予定です。

――「一人一台」といっても、校内だけで使うところ、校外にも持ち出せるところなど、自治体や学校によって子どもたちの活用状況は異なるようです。

そうですね。端末がまだ行き渡っていない自治体もありますし、セキュリティ上の問題もある。持ち帰れてもすべての家庭で通信環境が整っているわけではありません。さらに、仮に小中学生が一斉にオンライン授業を受けるとなると、現状ではインターネット回線が(情報のやりとりで)パンパンになってしまうかもしれない。何より、多くの先生たちはオンラインでの会議も未経験でした。環境が整備されれば、急にデジタル機器を活用した学びが進むわけではないんです。

――そういう状況でコロナ禍が起き、配備が前倒しされたのですね。現場では混乱もあるのでしょうか。

デジタルが苦手な先生たちもいます。私がよくアドバイスするのは「いきなりメインディッシュ(授業)で活用しようとすると大変だから、まずは事務作業などで使い、GIGAスクール構想が推奨するクラウド活用などの便利さを感じてみてください」ということです。

――具体的にはどういう方法でしょうか?

例えば、クラスでアンケートをとったり資料を配ったりするのをデジタル化し、子どもたちの端末に送る。また、急に紙がゼロにはなりませんので、教室にプリンターを1台置く。学校のプリントなどは通常、先生が印刷室や職員室で作っていますが、教室にプリンターがあれば、いちいち足を運ばなくてもよくなりますし、子どもたちも自分の成果を印刷できます。このほか、コロナ禍で集合しての研修ができなくなり、代わりに内容をビデオで撮って先生たちが各自学ぶようにしたところ、「好きな時間に見られる」「動画で十分」と好評でした。もともと先生たちは創意工夫が大好きです。使い方を知り、便利だと感じれば、授業での活用も進むでしょう。

格差の広がりが背景に

――「小中学生に一人一台の端末を」という構想が生まれた背景は。

大きく二つあります。OECD(経済協力開発機構)の学習到達度調査(PISA)などの結果から、日本の子どもたちはデジタル機器を用いた学習に慣れていないのではないかといった課題が指摘されました。これを何とかしなければならない。もう一つは、地域によって学校でのデジタル環境の整備にばらつきがあり、見過ごせないほど格差が広がってきたことです。あらゆる場所でデジタル機器が活用される時代を迎え、全国の学校でも環境を充実させることが重要だとして、学習指導要領が改訂されるなどして誕生したのが「GIGAスクール構想」なのです。

――小学校でプログラミング教育が必修化されたことも関係しているのですか?

子どもにとってパソコンは「電気仕掛けの紙と鉛筆」~専門家に聞く「いまデジタル教育に必要なこと」 :朝日新聞デジタル&Education

はい。小学校では2020年度、中学校では2021年度から全面実施される新しい学習指導要領では、プログラミングを含む情報活用能力が「学習の基盤となる資質・能力」と位置づけられました。「情報を意味あるものとして理解し、活用するために、デジタル機器を使っていきましょう」という趣旨です。プログラミングを小学校で必修化する狙いについて、文科省は「プログラミング的思考を育成する」と説明しています。

――現状、小学校でのプログラミング教育やオンライン授業はどれぐらい進んでいるのでしょうか?

ICT環境が整い入り口に立ったところです。特にオンライン授業については、小学校ではちょっと難しいかもしれないと感じています。一斉休校が終わった後は、学校に通えているのが現状で、オンライン授業の必要がありません。より本質的には、小学校低学年で身につけるのは「ちゃんと席に座る」「きちんと鉛筆を握る」といった「学びの所作」とでも言うべきベーシックなところで、対面で教えないとなかなかうまくいかないからです。ただ、それらを身につけた子どもたちが、その後に個別の知識を学ぶ目的では、オンラインはとても有効だと思います。

家庭でも、一人一台の時代に

――基本動作が身についたことを前提にすれば、学校ばかりでなく家庭でも知識を習得できるデジタル機器は大いに活用できそうですね。

すごい可能性を秘めていると思います。オンライン授業だけでなく、たとえば、自宅でインターネットの動画を見て予習し、リアルな授業でディスカッションをするとか。子どもたちの理解度や学びの速度は一人ひとりで異なり、自分にあったやり方で学習することがとても大切です。今後、オンラインによる学びは絶対に広がっていくし、デジタル機器はそのために欠かせないツールになります。学校だけでなく、家庭でも1人が1台のデジタル機器を持つ時代が来ると思います。

――とはいえ、子どもたちがパソコンやインターネットを利用することに不安を抱く保護者も多くいます。

一番気をつけないとならないのは依存でしょう。家庭では「目的を持ってデジタル機器を使い、時間を区切る」といったことを教える必要があると思います。ただ、社会のICT化の流れは止まりません。そんな時代において、デジタル機器は何も特別なものではなく「電気仕掛けの紙や鉛筆」と考えればいい。そうしたツールをいかにうまく使っていくかがポイントなんです。

子どもには壊れにくいパソコンを

――保護者が子どもにパソコンなどを選ぶ際、着目すべき点があれば教えてください。

小さな子どもたちは結構、端末を落とすんですよ。それで壊れると、ものすごく責任を感じてしまう子どももいる。大事に使おうと教えるのが前提ですが、そもそも落としにくい工夫がされていたり、万一の場合でも壊れにくい造りになっていることは重要だと思います。また、ネット通販などでは安価な端末も売られていますが、一定以上のスペックでないと、動画がカクカクして視聴しづらいといったことが起こりえます。オンラインでのやりとりを想定し、最近の端末にはカメラとマイクが当たり前に備わっています。ですから、搭載の有無ではなく、いい画像、いい音であるかを確認することも大事でしょう。

――保護者はどんな心持ちでデジタル機器を使う子どもたちに寄り添っていけばいいのでしょうか?

子どもたち一人ひとりに得手不得手があるし、興味や関心も異なります。同じ答えにたどりつくためのルートや時間も違う。デジタル機器は、子どもたちのハンディーを埋め、得意な分野を伸ばし、その子に合った道筋や速度での学びを提供しうるものでもあります。端末に「Office」といった保護者が使い慣れたソフトが入っていれば、まずは一緒に触れて、慣れ親しむところから始めてみてはいかがでしょうか。依存には気をつけつつ、子どもの可能性を広げるものだとして、デジタル機器をしっかり使っていただければと思っています。

子どもたちが使うことを想定した丈夫なパソコン

子どもの学びに必要な機能と安心感を搭載した富士通パソコンのタブレットPC「arrows Tab EH」。インターネットで調べものをしたり買い物をしたりと、家族みんなが使うWindowsパソコンとしても、ふだん使いには十分なスペックを備えています。

子どもたちはパソコンを落としたり足で蹴ってしまったりしがち。「arrows Tab EH」は落下や振動、加圧への耐久度に関する厳しい試験を繰り返して開発されました。液晶画面には強化ガラス、本体にも滑りにくい素材が用いられています。雨やホコリにも強い防滴・防塵(ぼうじん)設計なのもうれしい仕様です。

Microsoftの「Office Home & Business 2019」が標準でインストールされているので、文書を作成する「Word」、表作成や計算ができる「Excel」、課題発表に使う「PowerPoint」を用いて、表現や発表を行なうための練習を家庭でも可能に。子どもにとっても、これらのアプリに早いうちから慣れておけばアドバンテージになるはずです。

セキュリティ面も安心して使えるように、3年間無料で使えるセキュリティソフト「マカフィーリブセーフ」がついています。不正アクセスやコンピューターウイルスから長く守ってくれるのも、安心材料の一つと言えそうです。子どもが初めて触れるパソコンとして活躍しそうです。

富士通パソコン「arrows Tab EH」OS:Windows 10 Pro 64ビット版CPU:インテル®Celeron® プロセッサーN4000メモリ:4GBディスプレイ:10.1型ワイド[1920×1200]Office:Office Home & Business 2019

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